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 バレー部のオフの情報は去年同じクラスだった天童から仕入れている。ついでに牛島君が休日にすぐ予定を入れるタイプでないことは確認済みである。私は正しい答えを発表する生徒のような気持ちで、牛島君を遊びに誘った。牛島君は暫く黙った後、口を開いた。

「俺のことが好きなのか?」
「そうだよ!」

 だったら何なのだろう。下心がある女とのデートには行かないのか。それとも行く前に私の気持ちを確かめておきたいのか。普通遊びに誘われたら、行くか行かないかで答えるものだ。

「好きじゃない人にデート誘われたらおかしいと思うでしょ!」

 もはや私はデートであることを隠しもしなかった。男女が遊びに行く――しかも片方はもう片方に惚れている――ことがデート以外の何であるというのか。

「憧れかと思っていた」

 鈍いと言うべきか、自己評価が高いと言うべきか。少なくとも私にそのような崇高な感情はなく、あるのは醜い欲だけである。

「そうだとしても安売りしないで!」

 私が抱いているのが憧れだと知ったら、牛島君はデートに来てくれるのだろうか。それほど単純な男ではあるまい。

「それで、私が牛島君のこと好きだって知ったところで来てくれるの? くれないの?」

 結論を急げば、牛島君は彼らしい余裕で答えた。

「行く。女としてお前を見定めさせてもらう」

 態度でも目線でも上から見下ろされ、私は身じろぎすらできない。デートが約束できただけいいと思うべきだろうか。牛島君の視線は、まるで標的を定めるかのようでもあった。