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「えっ」

 佐久早が差し出したものを見て、私は固まった。佐久早の手にあるのは、持ち主に不似合いな可愛らしいラッピング袋だったのである。その理由は勿論、今日が私の誕生日であるからだろう。

「私佐久早の誕生日祝ってないのに」

 袋は触れるとふわりとしていた。中には柔らかいものが入っているに違いない。佐久早がぬいぐるみや婦人向けタオルを買っているところを想像したら、少しちぐはぐに思えた。

「俺が見返り目当てで祝ってるみたいなのやめろ」

 佐久早は、私が彼女だからプレゼントをくれているのだろう。佐久早の誕生日は付き合う前だったから、仕方ないと言えば仕方ない。それでも佐久早は、私がプレゼントをあげていないことは関係ないと言う。

「無償の愛ってこと?」

 私が試すように言うと、佐久早は「そうだ」と笑った。まだ愛など語れる年齢ではないが、佐久早が悪戯な顔をしてみせるのがおかしくて、私もつられて笑う。

「来年の佐久早の誕生日は絶対祝うから!」
「期待してる」

 高校生の恋愛は酷くあやふやなものだ。好きという気持ちだって、いつまで続くかわからない。だが少なくとも私は、自分達の未来を信じてみたいと思った。

「プレゼント希望ある?」
「お前が何を選ぶかを楽しみにしてる」

 佐久早がやや上から目線であることは否めないが、それも照れ隠しだということにしておく。まずは佐久早が何を選んだのか、見させてもらおうではないか。きっと何をくれたとしても、私は喜んでしまうのだろうけれど。袋を抱きしめる私を見て、佐久早は穏やかに笑った。