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インターハイの予選は公欠となる。当然、試合結果の共有もすぐに行われる。翌日の学校に、男子バレーボール部インターハイ出場という垂れ幕はなかった。誰もが距離を測りつつバレー部に労いの言葉をかけた。バレー部の面々は少し寂しそうな顔をしながらも、ありがとうと素直に試合結果を消化していた。
その中で一人、部活の時間ではないというのにぶすくれている男がいた。主将の及川だ。全国へ行くことは及川にとって悲願だったらしい。なるほど落ち込むわけだ。私は教室の隅に行き、及川の隣に並んだ。
「好きだよ」
教室の喧騒は普段通りだった。誰も私達を気には留めない。私達のしていることが告白だとわかっても、さして動揺はしないのではないか。
「え? 何今の。告白の流れだった?」
及川は意表を突かれたようだった。今日一日は誰とも話す気がなかったのかもしれない。
「いや、及川が元気ないから元気出してもらおうと思って」
そう言うと、及川は驚いたように目を丸くした。やがて前を向き、穏やかではない目をどこか遠くへ向ける。
「自己肯定感高すぎだろ。ホントそういうとこ羨ましいよ」
及川が今日構ってほしくないことも、だからみんなが構わないようにしていたことも理解していた。しかしそっとしておくことが正義だとは思わなかった。
及川は長い息を吐いた後、決意したように視線を上げた。
「ありがと、元気出た」
及川の手が乱暴に私の頭を撫でる。一応告白だったのだけど、返事はなかった。けれどそれでいいのだ。及川の安寧の方が、何倍も大事なのだから。
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