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「なァ、お前は『愛してる』って言われたことあるか?」
ワノ国へと向かう道すがら、唐突にローは尋ねた。月夜の晩黄昏ているような様子から、なんとなくそんな予感はしていたのだ。しかし現実にローのようなミステリアスな男のペースに巻き込まれると、こちらは困惑するものである。
「え……ないけど……」
「おれはある」
私は今、一体何のアピールに巻き込まれているのだろうか。ローがモテるということは重々承知だ。同盟を組んでからその様子はないが、各地で女を侍らせてきたのだろう。愛していると言わせては置き去りにしてきたに違いない。しかし、それを私に語る意味がわからない。
「ただの言葉なのに、嬉しいもんだな」
ローは夜空を見上げた。今夜は晴れていて、星が空に飾り付けられたように並んでいた。
「また言ってもらえばいいでしょ」
私は口を尖らせる。ローならば簡単に女の一人や二人作れるはずだ。
「もう無理だ」
ローが珍しく弱気なことを言うものだから、私は思わず口を開く。ローが何かを諦めるところを見たくないと思ってしまった。何故そう思ったのかは、わからないけれど。
「そんなことないって! トラ男はイケメンだし強いし医者なんだから!」
熱く語った私に対し、ローは眉を上げてみせた。その顔をしたいのは私の方だ。私に過去の女の話をして、一体何がしたいのだろうか。
「何の話だ? おれは恩人の話をしている」
「あ、そう……」
どうやら、恋愛ではなく親愛の話だったらしい。私だけ大切な何かを失ってしまった気がする。ローは何も気付いた様子はなく、甲板にどかりと腰を下ろしていた。ローが弱気だと調子が狂う。など私はまるでクルーのようなことを考えていた。
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