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 佐久早聖臣に告白をした。中庭は誰もおらず、昼休みは始まったばかりで、時間はたっぷりあった。だからだろうか。佐久早はすぐに返事をする気がないようだった。

「俺のどこが好きなんだ?」

 佐久早は少しの間を溜めた後、冷静に返した。それは興味というよりも、返事の判断材料にするための尋問に思えた。制服のスカートの裾を握る。上手く答えられなければ、私は告白に失敗するかもしれない。

「優しくて、周りを見てるところ」

 私の答えはありきたりなものだった。佐久早はそれについて何か言及することなく、次の質問へ進む。

「いつから好きだった?」

 これに答えるのは少しの恥ずかしさがあった。何ヶ月も前からあなたのことを性的に見ていました、と言うも同然なのだ。しかしここで正直に答えなくては、何が起こるかわからない。

「体育祭の頃……」

 私には模範解答がわからなかった。恐る恐る顔を上げると、佐久早はマスクの奥の顔をやや緩めたように思えた。

「俺もその頃から好きだ」

 一度頭が混乱して、少しして私達はハッピーエンドを迎えたのだと気付く。すぐにわからなかったのはそういう流れではなかったからだ。佐久早はわかりづらい。というか、最初から好きなら今までの質問に意味はなかったのだ。

「結局オーケーなら最初から頷いてよ! 試されてるかと思うじゃん!」

 私は答えの一つ一つで佐久早の返事が変わると思っていた。ところが実際返事は決まっていて、興味本意で尋ねているだけだったのだ。それなら付き合った後にでもすればいい。

「好きな奴のことを知ろうとして何が悪い」

 佐久早は開き直った様子である。「好きな奴」というワードを出されたら懐柔されるしかなく、私は大人しくなったのだった。