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 女子高生とは三度の飯より恋バナが好きなものである。別にそれはいいのだが、生憎私には話のネタがなかった。付き合っている彼氏もいなければ好きな人もいないのだ。話は必然と私にもきっと彼氏ができるという方に流れる。慰めのようなその言葉が、やけに居心地悪く感じた。

「私を好きな人なんて見る目ないかブス専だから!」

 耐えきれずに私は集団から距離をとる。実際、告白されたことなど殆どないのだ。特段優れた容姿をしているわけでもない。彼女達の言うように、すぐに彼氏などできるわけがない。
 席に着いたところで、隣から恨めしそうな声が聞こえた。そこで私は佐久早の存在を思い出した。

「好きで悪かったな」

 佐久早は怒っている、というより責めるような表情をしている。私に告白した数少ない男子の一人は佐久早だった。別に私は佐久早を蔑ろにしたわけではないのだ。ただ、謙遜せずにはいられなかったというだけで。

「さっきのは佐久早に言ったわけじゃないっていうか」

 女子の集団に聞かれるかもしれないという恐れも考えず、私の声は大きくなる。彼女達に知られることより、佐久早に勘違いされたままでいる方が怖かった。

「言っておくけど俺はお前を可愛いと思った上で好きでいるからな」
「恥ずかしいこと言うのやめてよ! 謙遜したくなる!」

 普通は喜ぶべき場面なのだろうが、いかんせん私は自己肯定感が低い。さらには自分のことを可愛いなどと思ってはいないため、否定せずにはいられないのだ。

「お前が謙遜する度俺の株が下がるのも覚えとけ」

 佐久早はそれだけ言って前を向いてしまう。私に根付いてしまっているのだ。謙遜をやめられるとは思わない。しかし、私は今後謙遜をしようとする度佐久早のことを思い出すのだろう。そう思わずにはいられない横顔だった。