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 相手に惜しげもなく好きだと告げるのが私の愛である。気持ちが知られているのは今更だし、少しでもアピールできた方がいい。そう思ってのことだったのだが、佐久早は不満だったらしい。丸い双眼は、不満だと言わんばかりに細められていた。

「お前の好きは軽い」

 佐久早は、遠回しに私に好きでいることを要求しているのかもしれなかった。好きでいることは当たり前だとした上で、さらに好きの質を求めているのだ。それには気付かないふりをして、私は何も知らない顔で佐久早を見る。

「佐久早は何だったら本気だと思うの?」

 恐らく、慎重な佐久早は遊ばれていないかと本気なのだろう。だがクラスメイト全員の目の前で遊ぶ人がいるだろうか。いくら理論として成立していても、佐久早を納得させられなければ意味がない。

「寝言で俺の名前呼ぶくらいになったら本気だろ」

 佐久早はぶすりとしながら言った。その様子から言葉が一層本気であることが感じられて、なんだか可愛くなってしまう。佐久早は無意識下でも好きを求めているのだ。

「でもそれ一緒に寝ないと確かめられなくない?」

 私の言葉に、佐久早は顔を上げた。

「佐久早私と一緒に寝られるの?」

 私の気持ちが本気かどうかを確かめるには寝言を聞くしかない。だが、寝言を聞くには寝ている間そばにいる必要がある。そもそも、佐久早は遊んでいるのではないかと疑っている人のそばで寝られるのだろうか。

 佐久早はたっぷりと間を置き、一人で怒ったようにそっぼを向いた。

「寝られるわけないだろ!」

 その様子はあからさまに私を意識しているもので、どちらが好きだと言っているのかわからなくなってしまった。今は思春期のせいだとしておこうか。