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 佐久早君に告白した時、彼の答えはイエスでもノーでもなかった。

「友達からでもいいなら付き合ってもいい」

 条件付きではあるが、私は佐久早君と付き合うことを許されたのだ。お祭り騒ぎしたいところを我慢し、私はいい彼女でいるように努めた。あまり嫉妬はしない、口出しもしない。呼ばれたらすぐに応じる(生憎佐久早君からの呼び出しはなかったが)。一方、佐久早君の態度はその真逆を行くようなものだった。出かけると言えば「お前今日は誰と出かけるんだ?」と聞かれ、飲み会に行くと言えば「一次会で切り上げろ」と言われ。私が思っている以上に、佐久早君は干渉をする人だったのである。彼は、自分で友達からと言ったのではなかったか。

「友達ってこういうのだっけ……?」

 思わず私が口に出すと、佐久早君は当然のように言い放った。

「俺には女友達ができたことないからわからない」
「じゃあ何で友達からとか言ったの!」

 確かに佐久早君の周りに女子はいない。いても、佐久早君は友達だと思っていなさそうだ。とにかく女友達という感覚がない佐久早君に、友達の距離感は無理だとわかっていたはずである。佐久早君は意地っ張りな目を外に向けた。

「俺はお前を好きではないからだ」

 その声色には、少しのプライドも感じる。恐らく佐久早君は恋愛感情にも鈍感で、自分が私などを好きだと認めたくないのだろう。

「好きでしょ! 絶対!」

 自意識過剰と思われるだろう。それでも私は言わざるを得なかった。好きでない人に、飲み会の二次会に行くななど言わないのだ。少し距離をとってやろうかとも思ったが、生憎私はそれができるほど淡白ではないのだった。