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 ローにセックスをしようと誘われた。ここで大事なのは、私達が付き合っているかということではない。普段女の気配のないローが、セックスなどというもののいろはを知っているかということである。

「セックスのやり方わかるの?」

 多少上から目線になってしまったことは否めない。私は経験があるのに対し、ローは恐らく経験がなかった。幼馴染として、ローはずっと庇護対象のように見てきたのだ。

「妊娠のさせ方なら知ってる」
「子供作らないでよ!?」

 勉強ばかりしていたローに性の知識などなかったらしい。いや、正確にはあるのだが、少々実践的すぎる。欲求を満たすためにする性交には避妊が重要になるはずだ。

 ローはきりりとした顔を崩さず、私の方を見据えた。

「おれが今まで読んでたのは医学書だ。エロ本じゃねェ」

 別に年頃の男の子がエロ本を読んでいようが何の偏見もないのだけど、ローは誤解されたくないらしい。真面目なローのことだ。この言葉も嘘ではないのだろう。

「たとえ避妊してようが、女を抱くからにはガキこさえても一生面倒を見るくらいの覚悟が必要だと思う」

「たとえ」ではあるものの、今回のセックスで避妊する予定はあると思っていいのだろうか。それよりも気になることが一つ。

「覚悟、あるの?」

 私が覗き込むと、ローは「ある」と頷いてみせた。知っていたことだが、ローは重い男だ。一度セックスするからには、心臓を預けるくらいの覚悟なのかもしれない。急にローの方が大人であるような気がして、私は何故だか悔しくなった。