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とある島に上陸した時、ローは通りを歩いていて人とぶつかった。死の外科医とて年中苛立っているわけではないし、相手は子供だ。ローは素直に謝ることにした。
「悪い」
できるだけ優しい視線で子供を見る。ところが子供は、泣いて去ってしまった。普段ならそういう顔だからと気にも留めないのだろうが、今回ばかりは違う。今日は子供のために優しくする大サービスまでしたのだ。
「おれに子供は無理なのか」
船に戻り、テーブルの上で手を組む。同じく食堂にいた名前は、困惑したような表情を見せた。
「私、まだ戦闘員でいたいんですけど…….」
それは自分が妊娠したくないということだろう。ローは名前を相手にしたいと言ったわけではない。
「おれ達は付き合っていないが」
冷静に返すと、名前の表情がスンと落ち着く。ローはため息を吐いて事のあらましを説明した。
「キャプテンが子供ウケするわけないじゃないですか!」
名前は強気だ。確かに親しみやすい見た目ではないが、そうはっきりと言われるといい気がしない。しかも、名前に。
「お前本当におれが好きなんだよな?」
ローは眉を上げた。名前は首を縦に振る。
「もういい。お前と子供は作らない」
席を立って食堂を出ようとすれば、後ろから「どういうことですか! キャプテン!」と呼び止める声が聞こえた。残念ながら今は無視だ。名前のくせにローに尻尾を振らなかった罰は受けてもらうとしよう。
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