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 佐久早と付き合って一年が経った。当時は高校生であった私達ももう大学生である。別の大学に進んで疎遠になるかと思えばそんなことはなく、佐久早はむしろ積極的に連絡をとろうとした。

「飲み会は一次会で切り上げろ」
「バイトは夜遅くまで入るな」
「俺よりバイトの方が大事なのか?」

 これらは私のラインに送られてきたメッセージである。最初は嬉しかったそれも、何度も言われれば飽き飽きする。第一、私は高校時代佐久早のバレーでさまざまなことを我慢してきたのだ。放課後や土日にデートができないとか、寝る前に通話するのを躊躇うとか、色々なことを。だというのに私が大学生になった途端どうだろう。佐久早は自分のことを棚に上げて私を束縛してばかりいる。これには私も反抗したくなった。

「私、結構佐久早のバレーに理解を示してきたつもりでいるんだけど」

 送信すると、ものの数秒でメッセージが返ってくる。

「俺とお前は違う」

 それが男女の違い――例えば遅くなると女性は危ないといったようなことではあると理解しているものの、どうしても詭弁に思えた。

「じゃあ佐久早がバレーで会えなくなったらもう知らない!」

 一方的に送りつけてスマートフォンを閉じる。どうせ佐久早は明日練習があるから早く寝るのだろう。逆に私は夜更かししてやろう。その心算で起きていた時、三十分程経って電話の着信画面が表示された。相手を確認してから、私はぶすりとした顔でスワイプする。

「……はい」
「やっぱり俺を応援してほしい」

 自分を棚に上げているとわかっているのに、腹が立つのに、どうしても佐久早に頼まれると頷いてしまう。これが惚れた弱みかと、私はつくづく知ることになった。