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※現パロ

「この人がおれの彼女だ」
「お〜! 可愛いじゃねェか!」

 よく晴れた日曜日、私は何故かローと小洒落たレストランにいた。さらに不思議なことに、ローの知り合いらしきピエロメイクの人も一緒である。今日は昼から体を重ねるのかと思いきや、彼女などと紹介されている。ローもローで普段と違い、偏食のくせに好き嫌いせずに料理を口にしていた。目の前の彼はローにとって大事な人であるらしい。一応合わせはするけれど。私はローを横目で見た。

「名前ちゃんはローのどこを好きになってくれたんだ?」
「え、から……」

 体、と言いそうになった時である。私はテーブルの下でローに足を蹴られた。とても彼女にする仕草ではない。いや、セフレとしてもされたのは初めてだ。

「優しいところですかね……」

 私の様子を疑いもせず彼は嬉しそうな表情を見せた。

「ローは優しい奴なんだ! よくわかってるな!」

 私達の不自然さは彼まで届かなかったらしい。私達は健全に食事を終え、彼の支払いで店を出た。「この後もくっついてくのは野暮だからな」と彼は姿を消す。格好つけているけれど、羽織りの羽根が足跡のように地面に落ちていっている。彼の姿が見えなくなった後、私はローに向き直った。

「何あれ!? 何で彼女ってことになってんの!」
「コラさんを安心させるためだ」

 コラさん、その名前すら今知った。そもそも彼が何の仕事をしているかすらわからないのだ。ローの知り合いだから、怪しげな仕事をしている可能性がある。そのコラさんに合わせる役は、ローなら他にもいたはずだ。

「何で彼女役が私なの!」
「コラさん受けがよさそうなのがお前だったからだ」

 私は眉をひそめる。ピエロメイクに気に入られそう、と言われて喜ぶべきかは微妙なラインだ。ローは私の様子など気にせずにそそくさと歩き出す。その先にホテルはない。

「それじゃあ付き合うぞ」
「待って!?」
「おれにコラさんへ嘘をつかせる気か」

 ローは軽い奴だと思っていた。だから肉体関係を許したのに、「コラさん」が絡むとここまで面倒な奴だったとは。私は歯を食いしばり、ローとの仲を受け入れる。

「ホテルと飲食代全部ロー持ちね」

「今だってそうだろ」というローの言葉を聞き流し、私は早足で歩き出す。ローはモテるように見えて、実はセフレなどそういないのではないか。私が頼りだと思ったらセフレのはずのローが急に弟のように思えてきて、私は情に流されまいと奥歯を噛んだ。