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 興味本意で開いたネットニュースに載っていた写真を見て私は仰天した。バレーボーラー佐久早聖臣熱愛、見出しの下の写真に映っているのは紛れもなく私なのである。マスコミ対策はしていたはずだった。それでも撮られてしまうのが有名人としてのさだめだろうか。私は何故か自分が被害者のような口ぶりで佐久早くんに電話をかけた。

「佐久早くんのイメージが……!」

 佐久早くんは女性人気がある上に、実力派として売っている。熱愛など邪魔になってしまう。一番申し訳ないことは私が佐久早くんと付き合っていないことだった。普段から密会している熱愛相手となら仕方ないと受け入れられるかもしれないが、ただ一緒にいただけの女とすっぱ抜かれた佐久早くんの気持ちはいかほどか。私は家から出るのをやめる、とすら言いそうな勢いだった。

「待て。気を付けて過ごしててもいつかはまた撮られる。イメージを言うなら別の女と撮られるよりお前と撮られた方がいい」
「た、確かに……」

 佐久早くんの言い分は筋が通っている。同じチームの宮選手ではないのだ。撮られるならまた違う人とより、私と撮られた方が誠実な印象がつくだろう。誠実という言葉は、佐久早くんによく似合うように思えた。

「だから俺達は付き合い続ける」

 佐久早くんは冷静と言うより、どこか饒舌なようだ。スキャンダルに惑わされないのではなく、スキャンダルそのものを利用しているかのような。

「付き合ってたっけ?」

 確認したのは私達がそれなりの仲であったからだ。既に二人で食事には行っているし、雰囲気を見てもう付き合っている、と判断する人も多い。

「じゃあこれから付き合う」

 佐久早くんの子供のような反論を聞いて、私は思わず笑った。プラスマイナスで言えば激しくマイナスだが、幸運はどこにでも転がっているということだろう。私は世間に自分の写真が出回っていることもそっちのけに佐久早くんとの幸せを噛み締めた。