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 今日の飲み会は座敷で行われた。飲むものや食べるものは大して変わらず、皆でビールを煽るような会だ。畳の上に直に座っているからか、どこか皆普段より酔っているように思えた。酒の強い望ちゃんまで酔っているのだ。普段から酔いがちな風間が泥酔しているのは必然と言えた。

 会計をまとめ、それぞれ座敷を降りる。皆が自分の靴を履く中、風間が足を突っ込んだのは私のサンダルだった。風間は全体的にサイズが小さいため、私のもので合ってしまうのだ。風間の風貌と不釣り合いなピンクのサンダルに、諏訪は指を差して笑った。私もまた笑っていたのだが、そのまま歩き出したとなれば別だ。

「ちょ、それ私の靴」

 当然私も酔っているため、走って追いかけるような行動力はない。というか履く靴がない。

「お前は俺の靴を履けばいい。どうせサイズは変わらない」

 確かに、私達の靴に互換性があるということは今風間が証明している。私は仕方なく、風間の革靴に足を突っ込んだ。素足のため酷く心地悪かった。でも風間のものだという新鮮さと酔いのせいか、私はあまり気にならない。革と皮膚がズレる感覚に負けじと、私は風間を追いかけた。

「返してよ〜」

 ここが海で私達がカップルなら格好ついただろうが、生憎私達は酔っ払いでちぐはぐな靴を履いていた。そのまま歩き出してしまう風間を追いかける。風間は迷いなく進んだ。あまりにも素早く歩くので、まるでピンクのサンダルが風間のものであるかのようだった。風間は暫く歩いた後振り返る。

「来たな」

 その嬉しそうな表情を見て、今回の飲み屋は風間の家の近くであったことを思い出した。

「なに、風間、そういう目的?」

 普段の私だったら、それなりに雰囲気を作ったり、逆に断ったりできただろう(どちらかはわからないが)。今の私は酔っているので下品に風間を突くしかできなかった。風間は赤ら顔で得意げな表情をしてみせる。

「持ち帰ったんじゃない。お前が来たんだ」
「はいはい」

 私達は連れ立って風間の部屋に入る。このままベッドへ行けたらいいのだが、恐らく玄関で寝落ちするか、トイレの便座を抱きしめているかだろう。そこは風間の計画が甘かったということで、私は不問になりたいところである。