▼ ▲ ▼
最初は思い上がりなのではないかと思った。しかしミスラの私への扱いは特別だし、見る目すら優しい気がしたのだ。私は恥を忍んで本人に尋ねた。私のことが好きなのか、と。
「はい。賢者様のこと好きですよ」
ミスラでも恋愛感情は知っているらしい。好かれていることよりもそちらに驚きながら、私は冷静に話を進めた。
「付き合う、とかはないんですか?」
「別に付き合ってなくてもできるでしょう。例えば」
「言わなくていいです!」
ミスラは恋愛感情こそ知っているが、普通の恋愛観ではないのだ。魔法使いである以上当たり前かもしれない。しかし、普通にお付き合いや結婚をしている魔法使いもいるのだ。
「私の世界では付き合うことが普通だったんです。付き合った方が浮気の抑制にもなるし」
付き合わなければお互いフリーだが、付き合えば他の男女とそれらしいことをした瞬間裏切りになる。私はともかく、ミスラは相手を支配しておきたいタイプかと思っていた。
「浮気したら殺すので大丈夫です」
「それはどっちを?」
案の定物騒なことを言い出すミスラにそっと尋ねる。ミスラは眠そうな顔で平然と言い放った。
「間男に決まってるじゃないですか」
前言撤回、やはりミスラとは付き合わない方がいいかもしれない。ミスラと付き合っては命が何個あっても足りないだろう。恐らく、ミスラが凶行に出るきっかけは浮気だけではないはずだ。
「やっぱり私達は友達でいましょう」
「今フラれてるんですか?」
話のわかっていなさそうなミスラをよそに、私は今の関係を続ける決意をした。
/kougk/novel/6/?index=1