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「痛い……」

 いくらやっていることが反政府活動だろうと、顔を合わせての会議や決まり事はある。今日は珍しく会議の開始時間前にサボが来ていた。私の呟きは隣の席のサボにしか聞こえなかったことだろう。

「よかったじゃねェか。痛みは戦士の勲章だ」

 時間通りに来て暇なのか、サボは私の話に口を出す。恐らく戦いの傷とでも思っているのだろう。私はサボが何も言えなくなることを知って、最強のカードを出した。

「生理痛」
「それを先に言え! 今炎で温めてやるからこっちこい!」

 案の定サボは慌て、手に炎を出している。私は有り難く炎にあやかりながら、サボの顔に刻まれた傷跡を見た。恐らくサボは、自らの傷も勲章ではないと思っているのだろう。

「私の生理痛は勲章じゃないんだ」

 炎でサボの輪郭が歪む。サボはどうも決まりの悪そうな顔をしていた。

「それを褒めていいのは名前の男だけだろ」

 理屈としてはわかる。しかし、冒頭のサボの発言を思い出してほしい。

「さっき褒めたよね?」
「結婚しろってのか!?」

 私は思わず笑い出した。サボはいつもどこかズレていて、周りを振り回しているのに今日は別だ。私の言葉にころころと転がされている。それをおかしいと思う私を気に食わないと言うように、サボは唇を尖らせていた。けれど炎を止めないのが彼の優しさだろうか。