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 高校の同窓会が開かれた。口々に仕事の愚痴を言う同級生を見て、侑は少し誇らしい。みんなより少し先に社会へ出た侑の方が偉くなった気がするのだ。「んなわけないやろ」と突っ込みを入れられ、侑ははたと今しがた登場した人物を見る。現れたのは、侑が高校時代数ヶ月憧れていた名前だった。

「名前が持ち帰られんように俺が守る!」

 侑の恋心とは基本的に軽いものなので、簡単にまた火がついてしまうのである。飲み勝負を始めた同級生の横で、侑は名前の隣を死守し続けた。その結果、守るどころか侑は酔い潰れていた。気付けば知らない小部屋にいる。小部屋と言うのはこの部屋の持ち主に失礼だろう。というのは、部屋の内装があまりにも女子らしかったので気を遣った結果である。果たして、侑は誰に持ち帰られてしまったのか。普段会うメンバーではない以上どうでもいいが、名前も誰かに持ち帰られてないか心配だ。

「あれ?」

 その名前が奥からひょっこり姿を見せて、侑は目を瞠った。しかも着ているのは部屋着らしい服装ではないか。

「潰れてたから連れてきたんやで」

 名前は侑の前に水を置いた。侑は礼を言うことすら忘れ、呆然と名前を見上げる。

「守ってくれてありがとう」

 別に名前と寝ることを狙っていたわけではなかった。当時の恋心に浸って、騒ぐことで楽しい思いができたら。そう思ってわざとらしくアピールしていただけなのに、まさかこんなボーナスステージがあるとは。

「あの……ヤったかどうかだけ聞いてええ?」
 雰囲気も何もなく侑が尋ねると、名前は挑戦的に笑った後口を開いた。