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 教室に残っていたのは私だけだった。インターンで抜けていた授業分、補講を受けていたのだ。そろそろ寮に帰るかと立ち上がった時、教室の入り口を塞ぐように誰かが立った。見覚えのあるシルエットは爆豪だった。

「返事しに来た」

 爆豪の表情は真剣だ。その手には手紙が握られている。私が数日前爆豪の下駄箱に入れておいたものだ。

「そういうの直接やる度胸がないから手紙にしたんだけど……」

 私は好きだ何だと直接言うのが恥ずかしくてラブレターという方法をとった。勿論、返事も手紙で来るものだと思っていた。付き合えないなどと直接言われる度胸はないのだ。

「知るか。俺ァ大事なことを紙で済ます気はねェ。それに緊張するような内容じゃねェよ」

 紙で済まさない、というのは真面目な爆豪らしい気がした。私が告白したのはそういう人だったのだ。わかっていても、心臓が追いつかない。

「俺もお前が好きだ。わかったら付き合え」

 ドラマチックな展開のはずが、爆豪の言葉の後暫くの沈黙が流れていた。私が何も言わないからだ。こうなるから手紙にしたのに、どうして爆豪は直接を選ぶのだろう。私は爆豪から逃れるように顔を腕で覆った。

「いい内容でも緊張はするんだよ……! こっち見ないで!」

 閉じた視界の向こうで、こちらに歩み寄る足音が聞こえる。それが立ち止まったかと思うと、加減されている力で腕を下げられた。

「知るか。告白されてる顔が見たくねぇ奴なんていねぇんだよ」

 私が好きで爆豪で告白したはずなのに。爆豪は、私のことをそれほどに好きだったのか。先程言われた言葉の意味を実感して、私は余計恥ずかしくなった。