▼ ▲ ▼

「ラブレター入ってたんだけどこれ白布?」

 私は未開封の封筒を差し出した。今朝下駄箱を開けようとしたら発見したものだ。中身を開ければいいのだろうけれど、白布なら直接言ってほしいと思う。しかし白布は慌てたり照れたりしなかった。

「馬鹿言え。俺だったらいつ読まれるかもわからないラブレターなんかに頼らねぇ。お前は視覚情報に弱いだろ。景色の綺麗な所に連れて行って雰囲気を作ってから告白する」

 その言いぶりは実に白布の賢さを表しているのだが、同時に解像度が高いことを感じる。まるで私に告白するプランを前から考えていたかのような真剣さだ。だが白布に告白しているかのような緊張はない。これが愛の告白だと言うなら、私はあまりの呆気なさに驚いてしまうだろう。

「私のこと好きじゃないんだよね?」
「当たり前だろ」

 私が聞くと、馬鹿にしたような回答が返ってくる。考えすぎか、と思おうとした瞬間、白布が口を開いた。

「ところで今度海にでも行くか」

 あまりにも突拍子がなさすぎる。まるで冷静な白布らしくなかった。

「今冬だよ?」

 私の言葉に、「知ってる」と白布は頷く。海水浴目的ではないとしたら、景色を眺めるためになってしまう。そんなの、白布が言った告白のプラン通りではないか。告白ではないと言われた時は安堵したくせに今になって高揚する自分が、酷く身勝手に思えた。