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 昔の仲間で集まろうと言えば当然聖臣も来てしまう。聖臣は一年近く経っても変わらず綺麗なままだった。他の友人の計らいか私達は隣同士にされ、折角だからとそれらしい話を始める。

「聖臣と別れてからさ、すごいモテたんだよね。プロアスリートと付き合った女だって」

 別に嫉妬させたいわけではない。聖臣が私に嫉妬してくれるかもわからない。だがなんとなく、恋の駆け引きめいたものをしたい気分だった。お互いに酒をセーブしていたからか、聖臣も場にそぐわず静かだった。

「他にマウントとりたいだけだろ。お前のことなんざ全然好きじゃない」
「あ、酷い!」
「今のは俺の本心じゃなくてそいつらの本心だからいいんだよ」

 聖臣は手元のグラスに口をつけた。果たして聖臣が私のモテ期に嫉妬したのか、自分の名前を使われることを鬱陶しいと思ったのかはわからない。ただなんとなく、聖臣が不快に思っていることは伝わってきた。

「聖臣の本心は?」

 ここでまた元に戻ってもいいですよ、とアピールするように私は聖臣を覗き込んだ。聖臣は鬱陶しそうに眉を寄せグラスをテーブルに置く。

「知るか。お前が先に言え。俺は二度とお前を口説かない」

 その理由は、聖臣と一度付き合ってしまえば別れた後に私がモテてしまうから、と思って誤解はないはずだ。私はとっておきとばかりに笑顔を見せる。

「別れなければいい話じゃん!」
「プロポーズするな」

 確かに、私達の年齢ではもう結婚も見えてきてしまう。結婚してもいいかと思えるのは決して私が軽いからではない。聖臣だからだ。付き合う前に感じていたような胸の高鳴りはまるでないのに、付き合う理由ばかりが浮かんできて私は笑ってしまった。