▼ ▲ ▼

 嵐山と私は体を重ねるだけの関係だった。その関係性に不満はない。ただ一つおかしいと思うのは、嵐山が気持ちごと私に入れ込んでいることだった。他の男と話していれば肩を抱いて割り込んでくるし、行為後にスマートフォンでチャットをしていた日には彼らしからぬ力強さでスマートフォンを取り上げられた。そんなもの、まるで好きだと言っているようではないか。嵐山の言動に対し、セックスフレンドという名目はまるで釣り合っていなかった。怖いとすら思う目で私を見るのに、何故嵐山は告白をしないのか。嵐山が私に触れた時、目が合ってしまった。私の言いたいことは視線から伝わってしまったようだった。

「好きだと言ったら名前は断る気だろう?」

 私の体の中に嵐山が入ってくる。その圧迫感に息を吐きながら、僅かに残された思考のリソースを嵐山に割く。嵐山は、言ったら関係を断たれるとわかっていてわざと言わなかったのか。嵐山らしからぬずるさだ。

「それとも俺が体だけ求めているように見えたか? 俺の気持ちはまだ足りないか?」

 嵐山が奥へ、奥へと進める。そのたびに体を貫かれているような心地がする。私の胸はいっぱいになった。恐らくこれ以上のものを受け取ってしまったら私は壊れてしまう。

「や、わかってる……」

 なんとか吐き出すと、嵐山は「いい子だ」と言って私の腰を掴んだ。あ、と思った時には嵐山が動き出す。私は何も考えられなくなった。多分、嵐山の狙い通りだ。