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窓の外は酔っぱらいの声がうるさいのに、部屋の中は静まり返っている。俺達は先程までが嘘のように大人しくベッドに横たわっていた。俺は基本お喋りな方ではない。けれど苗字さんの前では話すように努力してきた。主に、愛を伝えるために。俺が何も話さなければ苗字さんは何も言わないのだという当たり前のことを、今再認識していた。
「好きって言わないの?」
衣擦れの音がして苗字さんが寝返りを打ったのがわかった。性をちらつかされても、生憎俺にもう一回戦する気はない。なんだか虚しくなってしまったのだ。
「言ったら苗字さん別れる気ですよね」
苗字さんは俺にわざと告白させてフる気だ。好きと言わせないと、きちんと断れないから。俺との関係性を切る糸口を探しているのだ。残念ながら俺はその誘いに乗ってやらない。俺は微々たるものでも苗字さんと繋がっていないのだ。
「私達は付き合ってないよ」
別れる、という言葉に対して苗字さんは反応した。まるでそれが重要だと言うように。
「でも他人でもない」
俺が許されている証拠を示すように、俺は苗字さんの腰を引き寄せた。苗字さんはそれをお誘いだと思ったらしかった。
「もう一回する?」
すかさず俺は次回の約束をとりつける。
「それは来月でお願いします」
「病院みたいに予約するなぁ」
何と言われたっていい。苗字さんとの繋がりを切らないためなら、俺は足掻く。俺は苗字さんに回した腕に力を込めた。
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