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烏丸くんを家に招待することになった。というのもデートのような文脈ではない。防衛任務終わりに同じく任務終わりの烏丸くんと合流して、みんなでどこかに寄ろうとなった時に話に上がったのが私の家だったのだ。私の家は警戒区域に近いが、両親はあまりそれを気にした風ではない。恐らく私のボーダー入隊を許したのも同じようなことなのだろう。
私の隊の隊員、それから烏丸くんをリビングに迎え入れ、私はとあることに気付く。烏丸くんは家族への連絡をするためかスマートフォンを弄っている。烏丸くんの家は確か生活費を切り詰めているのではなかったか。
「WiFi繋いでいいよ!」
そう言ったのは、年頃の少女並みにイケメンである烏丸くんに媚びたいという思いからだった。烏丸くんは「いいんですか、ありがとうございます」と素直にパスワードを入力した。だが一つ言わせてほしい。私はWiFiの見返りに何かを狙ってなどいなかったのだ。
「今月ギガ超えそうなんです」
本部の食堂にて、烏丸くんが私に近付いた。何かと身構える私に対し、烏丸くんは先程の言葉を言い放った。私はあまりの脈絡のなさに、持っていたスプーンをテーブルに置いた。
「先輩ん家で過ごさせてもらってもいいですか?」
そう語る烏丸くんは全く申し訳なさそうな様子がない。まるでそうするのが当然、といったような態度だ。いつの間に私は烏丸くんの内側の人間に入ってしまったのだろう。
「意外とがめついね?」
「誘ったのはそっちじゃないですか」
誘ったなど、そんな怪しい言い方はやめてほしい。仮にも私達は思春期の男女であるし、そういったことに少しの気まずさがあるはずだ。烏丸くんはわざと言っているのか。烏丸くんが意外とサディスティックな人だと知るのは、これから少し先の話だった。
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