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 おれはオペオペの実の能力者だ。当然、ハートの海賊団で船医を務めるのもおれである。体に大きな傷がある者から酔っ払って転んだ怪我がある者、クルーを平等に診てきた。女も例外ではない。しかし名前だけは、医療と名をうって裸を見てはいけない、という気がしていた。

「お前には能力を使う」

 胃の不調でおれの部屋に来た名前は、大袈裟に驚いてみせた。

「え、何で!? 触診じゃダメなんですか?」
「ダメだ」

 おれの能力は体力を使う。おれに医術の知識があることもあり、簡単な病気なら能力を使わずに対処している。その方が体力の消耗は抑えられるが、実際に体を見たり、触ったりしなければいけない。

「キャプテンが私の裸見るなんて今更じゃないですか」

 名前がけろりと言う。そのあっけらかんとした態度と、おれが気にかけている点を当てられたことが相まっておれは冷静さを失った。

「おれが気にするんだよ!」

 おれは無理やり能力を使い、名前の胃を診る。リアルな臓器に名前は顔をしかめていたが、おれにとっては今更だ。原因はただの飲み過ぎだろう。おれはアルコール分解を助ける働きをして、名前を元に戻す。少し前にも能力を使ったからか、おれの息は切れていた。するとそこに、思わぬ来客があった。ペンギンだ。航海図を手にしているあたり、相談に来たのだろう。だが部屋の様子を見て言葉を失っている。

「……何やってたんですか?」
「診察だ!」

 おれは何もしていないというのに。むしろ何もしないために能力を使ったのに。どうしてこうならなくてはいけないのだ、とおれは頭に手をやった。名前だけが楽しそうに笑っていた。