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 合コン、と名の付いた会ではなかった。ただ知り合いにバレー選手がいて、私の会社や知り合いの会社、プロバレーチームの人達が雑多に集まっただけだ。話の中心は専らアスリートの彼らであったが、影山くんはぽつりと端に佇んでいた。影山くん自身も興味や質問を向けられていたのだが、その答えがあまりにも味気ないので女子社員は他の選手の元へ移行したのだ。さしてアスリートというものに興味のなかった私もまた端にいた。話が弾んだわけではないが、私も影山くんも先程から同じ空間を共有している。

「一緒に抜けます?」

 そう言ったことに、少しの下心もないと言えば嘘になる。退屈な会を抜けられるならそれでよかったし、影山くんとセックスをするのもまた面白そうだと思った。影山くんは前を向いたまま言った。

「セックスしたら多分好きになっちゃうからダメです」
「別にセックスするとは言ってないけど」

 随分子供らしい言葉遣いをする人だ、と思った。中身もまた子供らしい。アスリートのくせに遊んでいないのだろうか。下心は少なからずあったくせに、それを見抜かれると私はへそを曲げた。断られた、という情けなさもあったかもしれない。

「俺は清楚な人が好みなので」

 好きになりかけているくせに、影山くんは私をフった。そのことに少しの反抗心を覚える。私は影山くんをじっと見た。

「じゃあ何で私と飲んでるの」

 拗ねたような声を出すことを恥ずかしいと思わないのは、後何年先までのことだろうか。影山くんはさして気に留めた様子もなく、緩んだ顔を私へ向けた。

「何ででしょうね。楽しいから?」

 影山くんは酔っている。多分、彼はクールな人だ。影山くんの緩んだ姿が可愛くて、反抗心が溶けていくのがわかる。酔っ払いに転がされていることが、今更ながら悔しいと思った。