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「だろうなぁ」

 私の返事を聞いた後、エースは大きくそう言った。ハーツラビュルの庭園にエースの声が響き渡る。二人きりの密室で言うのではなく、日常の延長のように言うのがエースらしいと思った。それでも衝撃はあるらしく、腰に手を当てて項垂れている。

「まあフラれるだろうなと思ったよ」

 エースが軽口なのは今に始まった話ではない。こうして普通に話していても、落ち込んでいることはあるのだろう。私は慎重に言葉を選びながら口を開いた。

「じゃあ何で告白したの?」

 言ってから、告白したことを責めているみたいだ、と思った。決してそんなつもりはない。ただ、エースは友達でいることを重んじるタイプだと思っていたので少し意外だった。

 エースはこちらを見た後、バラの樹に手をかけた。エースが花を手折ってしまうのではないか、と少し心配になる。

「告白したら意識してくれんじゃん? あと罪悪感とか」

 エースは花に手をかけただけだった。私は安堵しつつも、徐々に追い詰められているような気持ちになる。エースにとって告白はゴールではなく、道の途中なのだ。

「エースは諦めてないってこと?」
「当たり前じゃん」

 エースらしい、と思いつつ私は身が引き締まるような思いがする。何にでも器用なエースのことだ。私を手にかけようと思ったら、本当に叶えてしまうに違いない。

「とりあえず、これからたっぷり意識して。気まずいの大歓迎だから」

 エースは私を指差して、寮の方へ消えてしまった。エースが大歓迎でも私はそうではない。と思っている時点で既にエースの掌の上なのだ。これは相手が悪い、と私は息をついた。