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「記念日が欲しいなぁ」
それは私のふとした願いだった。私達はなんとなくで付き合った。少人数で飲んでいたのが二人で飲むようになり、ある日勢いで体を重ねた後に「もう付き合ってるってことでいいよな」と聖臣が言ったのだ。なので正確にはセックスをした日が付き合い始めた日と言えなくもないのだが、聖臣はそれを認めようとしない。体から始まったと認めるのが嫌なのだろう。私達は一緒に過ごす内になんとなく付き合い始めた、ということになっている。
聖臣は前を向いて歩き出した。偶然、私達の目の前にはクリスマスツリーがあった。お願い事をするのは七夕だけど、記念日がクリスマスプレゼントでもいい。聖臣は白い息を吐いた。
「結婚してくれ」
私は目を瞬く。私の言葉は、結婚を急いでいるように聞こえただろうか。その場に立ち尽くす私に、「違うのか」と聖臣が声をかけた。
「私は付き合った日を作りたいって意味で……」
衝撃のあまり、私は誤解をとくのに必死だった。それが結婚を嫌がっているように聞こえると気付いたのは後からだった。
「じゃあ結婚はいいか」
聖臣がそっぽを向く。聖臣なりに、勇気を出してくれたのだとわかっている。
「いや、する!」
私は勇んで声に出した。そのあまりの勢いに聖臣が笑う。とはいえ、すぐに結婚できるほど環境が整っていない。本当にただの口約束だ。それでも私は嬉しかった。
「来年中に色々決めよう」
聖臣はゆっくりと歩き出した。慎重な聖臣が私の一言で結婚を決めるということが、少し意外だった。
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