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 言い方は遠回しであったが、好きだという内容を告げられた。彼はそのまま去ってしまったので、私は自分なりに佐久早くんについて考えた。決して嫌いではない。けれど、とりたてて好きでもない。付き合うには気持ちが足りないような気がするが、全てのカップルが交際初期から両思いであるわけではないだろう。私は返事を決めて佐久早くんを呼び出した。佐久早くんがよければ。私の返事は良いものだったのに、佐久早くんの顔は険しかった。もしかして、本気ではなかったとか。途端に私の体に不安が走る。佐久早くんは仏頂面のまま、唐突に口を開いた。

「なんとなくならオーケーするな」

 私の心を言い当てられた気がして、どきり、と音がした。半端だと言われている気になったのだ。半端を許さないから、佐久早くんはバレーで大成したのだろう。

「俺を好きになったら言え」

 そう言って去る佐久早くんの後ろ姿が、告白してくれた日の姿と重なった。佐久早くんは本気なのだ。少しでも疑った自分が恥ずかしくなった。何事にも本気で挑む佐久早くんを、少し格好いいと思った。

「好き……だと思う。きっかけは告白されて意識したことだけど」

 二ヶ月後、私はまた佐久早くんを呼び出していた。佐久早くんと向き合う、というような手取りは必要なかった。私は意図せずとも佐久早くんのことを考えていたし、佐久早くんの恋愛の仕方に惹かれていたのだ。舞い上がっているだけと言われたらそれまでだけれど、今の私はもっと落ち着いた気持ちで佐久早くんを慕っていた。

「ドキドキするか」

 佐久早くんが、私の手を胸に当てる。性別が反対だったら大変なことだ。初めて触れる佐久早くんの体は硬くて厚かった。胸というより重なった手に高揚しながら、私も「します」と言った。

「なら付き合ってもいい」

 佐久早くんは相変わらずの冷静さだ。だがその胸の鼓動が速いということを、私は今日知ってしまった。