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ワノ国での戦いが終わった。大して戦闘に役立たない私がすることと言えば、宴の準備くらいである。今回はワノ国の料理だという味噌汁を作ってみた。味はどうかとみんなに絡むのも忘れない。一部のつっけんどんな返事を除いて、大抵は美味しいと言ってくれた。問題はこの男、トラファルガー・ローである。
てっきり「まずい」「普通」など言われるものと思っていた私は、その表情の柔らかさに拍子抜けした。彼も戦いが終わって気が緩んでいるのだろうか。
「美味ェな」
ローは味噌汁の器から口を離す。
「お前の作った味噌汁が毎日食いてェ」
これは、かなり大きな一言である。私が何か言う前に、近くで話を聞いていたらしいヤマトが口を挟んだ。
「それはワノ国で婚姻の申し込みなんだ!」
居心地が悪いようで嬉しいという、何とも言えない心地に陥る。ローはヤマトの言葉を聞いても態度を変えない。
「ワノ国じゃなくても結構なこと言ってるけど……」
ナミが呟いた声は聞こえなかったことにする。ローはお椀を置き、冷静に腕組みをした。
「おれ達は海賊だ。籍を入れられるわけねェだろう」
ヤマトの言葉に対する真面目な返しである。確かにその通りだが、味噌汁を美味しいと言ったのはローのはずなのに私が告白したようになっている。
「何で私がフラれた感じになってるの!?」
ローとて美味しいと言っただけで告白したわけではないが。いやあれは告白だったか。私の頭の中をぐるぐると駆け巡る。ローはそのやけに整った顔をこちらに向けた。
「おれのプロポーズ聞きたいか」
本気でプロポーズするつもりなのか、ふざけているのかといったことはどうでもいい。ローのプロポーズを聞いたら私はもう戻れなくなると思った。
「聞きたくない」
私が言うと、ローは大きな舌打ちをする。やっぱり私じゃなくてローが告白してるよなぁ、と思いつつ私は自分の作った味噌汁を啜った。
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