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 私の告白は思ったより長丁場になった。というのも、佐久早が曖昧な反応をするからだ。普段からよく話す仲だから断りづらいというのもあるのだろうが、私はそれをあとひと押しだと判断した。畳みかけるように、佐久早へ言葉をぶつける。

「佐久早が好きになるまでは手も繋がないから!」

 それまで唸り声のような声で返事をしていた佐久早だったが、これには明確に反論した。少し険しい顔は、普段私にからかわれた時のようだ。

「俺を処女扱いするのやめろ」

 どうやら手を出さないと言われたのが不服だったらしい。でも、好きではない相手とそういうことをするのは嫌なものではないだろうか。私の配慮は佐久早にとって馬鹿にされていると感じたらしい。佐久早は低い声で続けた。

「あとそういうのは男からやるもんだろ」

 冷静に考えればそれは、一般論だったかもしれない。しかし今は告白の場面で、私の中の登場人物は私と佐久早しかいないのだ。

「え? だって佐久早嫌でしょ?」

 私が言うと、佐久早はきっと視線を上げた。

「俺だってウブじゃないんだ。手くらい繋げる」

 そう言ってこちらへ近寄ってくる姿に、思わず私の方がたじろいでしまう。佐久早は意にも介さず私の手を掴み、手を握った。それどころか、指を絡めている。

 どうだ、とでも言いたげに佐久早が私を見た。これは一体何のアピールなのだろうか。佐久早は私が佐久早を好きだということを忘れてしまったのかもしれない。私は一体、どうすればいいのだろう。