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 名前がオールフォーワンに攫われた。敵連合に攫われたのは爆豪も同じであったが、オールフォーワンと直接見えたのは名前だけだった。何をされているのか、と爆豪のこめかみを汗が伝う。この心配は、決してクラスメイトとしてしているわけではない。本当なら、一番に守りたい人物なのだ。それが同じくして捕まっているのだから不甲斐ない。守れていないではないかと。

「最悪の仕掛けをしておいたよ」

 爆豪が敵連合のアジトに捕まっていた頃、名前がオールフォーワンから解放された。その見た目に異変はない。爆豪を見て名前を呼んだくらいだ。記憶だってあるのだろう。何もされていないではないか、と爆豪が疑い始めた頃、名前が爆豪に擦り寄った。本来の名前ならば、ありえない動きだった。

「私は爆豪が好き」

 爆豪の目の前が真っ暗になる。そうか、仕掛けとはこれだったのか。爆豪も名前のことを好きなのだから、好かれること自体は嫌ではない。しかし、敵の手によって洗脳されて嬉しいと思えるだろうか。爆豪は、できることなら自分で振り向かせたかった。爆豪のヒーローを目指す努力や、名前を気遣う姿を見て好きになってほしかった。無条件の愛など、いらないのだ。

「……っ」

 好かれることが悔しいなど、思いもしなかった。両思いになったら幸せな未来が待っているものだと思っていた。オールフォーワンからの贈り物は、間違いなく爆豪に対しての嫌がらせだ。