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「うーん、じゃあ付き合う?」
八つ当たりに近い苦情を言われた凪くんの反応は予想外のものだった。私は拍子抜けする。凪くんとサッカーを始めたせいで私が玲王くんにフラれた、と言ったところで凪くんが玲王くんに何かしてくれるとは思っていない。ただ、「大変だったね」とか「ごめん」とか言ってくれればよかったのだ。凪誠士郎という男は、常識の範囲外にいるようだった。
「俺に言っても仕方ないよ。玲王のこと見返したいんでしょ? なら付き合えば」
凪くんに言われて、私は玲王くんを見返したいのだと気付いた。勿論まだ好きな気持ちもあるが、一方的にフラれて腹が立っている気持ちの方が大きい。なんだか流されているのではないか、と思いながら私は口を開いた。
「確認だけど、私のことは」
「全然好きじゃない」
付き合おうと言っている人の発言とは思えないくらいの即答である。私は項垂れる。別に凪くんのことなど好きではなかったのに、凪くんにもフラれた気分だ。
「でも多分、玲王よりは好きなんじゃない」
私は顔を上げた。もしかして、ここから恋が始まったりするのだろうか。私の胸が小さくときめく。すると凪くんはスマホを取り出して言った。
「俺黒髪の人好みだから」
たったそれだけ。まるで玲王くんが、髪色以下の理由で私と付き合っていたと言うような。
「玲王くんはちゃんと私のこと好きだったし!」
私は叫んでその場を後にした。凪くんが好きなのか、玲王くんが好きなのかわからなくなっていた。玲王くんのことはきちんと好きだったはずなのに、この数分間で割り込んでくる凪くんに戸惑いを隠せなかった。
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