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 私達は地元に残留した組であるが、上京した組と一緒に会おうということになった。そういった時の会場に選ばれるのは大抵東京である。地元はみんな同じはずなのだけど、と思いながら私は東京へ行った。会は普通の同窓会のようだった。終了して長野へ帰ろうというところで、新幹線が止まった。

 記録的な大雪らしい。私達は東京で一泊することを余儀なくされた。ホテルはほぼ埋まっており、なんとかとれたのはラブホテルの一部屋だった。昼神も一緒に泊まることになる。昔からの付き合いとはいえ、異性は異性だ。緊張する私をよそに、昼神は落ち着きはらった様子でラブホテルのソファに腰を下ろした。

「ここはラブホテルで、セックスするための場所。ラブホテルで何もしなかったら、すごく変わっていると思わない?」

 その口調はまるで小説か何かの登場人物のようだった。昼神は頓狂な人物を目指しているのだろうか。読めない視線が私の方を向く。

「名前ちゃん、この間俺のこと変わってるって言ってたよね」

 私が息を呑む。確かにそう言った。周りに流されない、独自の雰囲気を持っているところが、若者らしくないと思ったのだ。けれどそれは、こういった事態を想定してのことではない。

「どっちがいい? 変わってる俺と、普通の俺」

 昼神は遠回しに言っているけど、これはお誘いなのだと思った。昼神は抱こうと思えば私を抱けるのだろう。その上で、選択を私に委ねている。私は昼神を好きなのか、ということはどうでもよくて、昼神と一緒に小説の中の登場人物のようになりたいと思った。私は口を開く。昼神はにっと笑った。