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 少し前の合コンで知り合った仲だった。相手は大して私に興味がないようで、前のめりになることはなかったが、連絡先だけは交換した。それから大した連絡は取り合っていない。深夜に呼び出しをかけたのは一種の賭けだった。

 律儀そうな人柄通り、彼、赤葦さんはホテル街に来た。随分疲れた様子だが、それでもやってくるのは欲があるからだろうか。少し得意げな気持ちになりながら私は赤葦さんと部屋に入る。赤葦さんはベッドに傾れ込んだ。それほどしたかったのかと思った次の瞬間、彼は寝息を上げていた。

「信じらんない」

 私は一人呟く。あれから三時間が経っていた。寝られたまま何もせず帰るというのはどうも許せなくて、私は忠犬のように待ってしまっている。少し顔色の良くなった赤葦さんは、反省の色も見せずに開き直っていた。

「どうとでも言ってください」

 彼がベッドに座っているのに対し、私はソファである。お互いに服は一枚も脱いでいない。こんな華金の過ごし方があるだろうか。私は責めるように赤葦さんへ近付いた。赤葦さんは視線を上げた後また足元の方を見る。

「で、睡眠も食事もとった今なら元気ですが……」

 今更のお誘いだ。その言い方にも私は虚勢を張ってしまう。

「私がどうしてもしたいみたいな言い方やめてくれる?」

 呼び出したのは私のくせに、私に付き合ってやっているというような言いぶりに腹が立った。赤葦さんは大して気を悪くした様子もなく、真面目な顔をし続けている。

「失礼。では無理やり」

 手が引かれて、あっという間にベッドに引きずり込まれる。何が失礼だ、と思う。初めて見る赤葦さんの欲情した顔を前に、私も興奮していた。