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 私は今、確かに告白というものをしていた。メッセージアプリや電話ではなく直接告げているのは、私のせめてもの勇気だ。なんとなく、佐久早は直接を好むのではないかという気がした。案の定、佐久早は嫌そうな顔をしなかった。ただ、いい顔もしていなかった。

「俺は強豪のバレー部だ。構ってやれるかはわからない」
「うん」

 佐久早はすぐに答えを言わなかった。注意書きが多い奴なのだろう。佐久早が強豪のエースであることは承知済みなので、私も頷く。でも、やはり普通の付き合いへの憧れもある。

「あと潔癖なところがあるからお前を全肯定してやれるわけじゃない」
「……うん」

 潔癖も知っていたことだったが、付き合ったら変わるのではないかと思っていた。普段厳しい言葉を投げる佐久早でも、彼女には甘い言葉を吐くのだろうと。しかし佐久早の言い分では、どうもそうはいかないようだ。少しずつ、私の心が軋むような音を立てる。

「それでもいいのか」

 佐久早は感情こそわかりづらいが、ここで終わりにしたいのだろうということが見えた。つまり、付き合う話になると。私は告白をした立場であるのに、少し身が引けていた。

「やっぱりいいかも……」

 私が言うと、佐久早は不機嫌な表情を浮かべた。仮にもこれから付き合おうという女の子へ向ける顔ではない。

「は? お前俺を好きなんだろ。もう少しガッツを見せろよ」
「そういう体育会系のノリ苦手で……」

 私が「好き」と言ったのをいいことに、気持ちを搾取されている気がする。付き合った暁には、「お前俺を好きなんだろ」で何事もやらされてしまいそうだ。

「俺は結構インドアだ」

 不思議と凄んでいる佐久早を見上げる。今から言う言葉は、私も少し恥じらいがある。

「ていうか佐久早、私と付き合いたいの?」
「お前が言ったんだろ!」

 佐久早は憤慨したような、照れたような表情を浮かべた。取り乱す佐久早は珍しい。私は笑いそうになるが、付き合ったら佐久早という姑にいちいち小言を言われるのだと思うと笑えない気分だった。