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 男性と二人で飲むのは久々だった。元々は今回プロジェクトに深く関わった三人で飲もうという話だったのだが、その内の一人が来られなくなってしまい、どこかよそよそしい雰囲気を出しながらも私達は二人で乾杯した。

 酒が入ってしまえばあとは勝手に盛り上がり、私達は関わって四ヶ月とは思えないほど話に花が咲いた。赤葦さんとは友達を超えた何かになってもいいと思った。現に、私達は日付が変わっても飲み駅へ向かって漫然と歩いている。このままでは終電を逃してしまう。でも二人とも、急ごうともどこかへ退避しようとも言わなかった。距離感をまだ、探りかけている最中だった。

「終電を逃すのもいいですけど」

 無言の駆け引きが行われている頃、赤葦さんが唐突に口を開く。私は赤葦さんを見た。酔っ払っているくせに、随分据わった目をしていた。

「一晩だけ特別になるよりも、一旦ちゃんと帰って来週も再来週も連絡をとりたいです。今日はお互いぐっすり寝ましょう」

 そういえば、私達のプロジェクトは今日で終わりだ。廊下で挨拶することはあっても、今日のように親しく話をすることはなくなるだろう。今日セックスをして終わる関係もそれはそれで「エモい」のかもしれないが、私は教科書的な正しい関係を結びたかった。

「俺は結構、緊張疲れしました」

 そう言って笑った赤葦さんに、私も笑いかけてみせる。「走れますか?」の一言に頷いて、私は赤葦さんと自然に手を繋いだ。今日はこれくらいでいい、と思った。