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 今日、凛の家に行ったら確実にセックスをしてしまうという予感があった。今までの時間を考えれば遅いくらいだ。決して嫌ではないのだけど、心の準備というものがある。ましてや、幼馴染相手だなんて。

 一応付き合ってはいるけれど、まだ幼馴染という感覚が抜けなかった。冴と、凛と、三人で遊んだ日が思い起こされる。冴を置いて、私達は大人になってしまう。冴は「余計なお世話だ」と言いそうだし、冴自身の相手などいくらでもいるのだろうけど、幼少期の三人の関係は今日終わる気がした。

 凛が飲み物を取りに行っている間、私は凛の部屋へ向かう。何度も来ているというのに、今日ばかりは間違えてしまった。私が凛ではなく冴の部屋に入ったと気付いたのは、その部屋にあまりにも使用感がなかったからだ。

「ちょうどいい。ここでするか」

 気付けば後ろに凛がいて、凛は私の横から部屋に入った。飲み物は手をつけないままテーブルに置き、長らく使われていないだろうベッドに近づく。

「何で?」

 私もベッドに近づくと、凛は私を優しく誘導した。凛の体の硬さと冴のベッドの柔らかさを感じながら、私はベッドに横になる。

「冴がお前を好きだったからだよ」

 凛が何気ないように言った言葉が、私の胸をえぐる。先程まで高揚すらしていたのに、急に今日のセックスが不安になった。このまましていいのかわからなくなった。凛を好きかどうかさえ、自信が持てなくなってきた。だが凛は今からやめてと言ってもやめてくれないだろう。私達は付き合っている。冴と凛の私の、幼少期の三人関係は今日終わる。それがどんな形になれど。

 凛は少しも疑わない瞳で私の体を見た。凛との初めてにこんな感傷を抱くなど、思ってもいなかった。