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「玲王の周りに純情な女の子がいるとか、聞いてないんだけど」

 待ち合わせ場所に腰を下ろしていた凪は、私を見てそう言った。

 事の発端は私の知らない所だ。凪の質素な暮らしに呆れたらしい玲王が、女を知れと自らの取り巻きを派遣した。それが私だったのだ。玲王が私を選んだことに大した意味はないだろう。取り巻きの中でも一番従順だった。恐らくはそんなところだ。

「あんた玲王が好きなんでしょ」

 凪に言い当てられ、私は黙り込む。凪は優しい奴なのだろうか。もしかしたら、「俺とはしなくていいよ」と言って玲王の前ではしたことにしてくれるかもしれない。そうしたら私は玲王に失望されずに済む。だけど、私と凪が致したと知った玲王の反応も見てみたいと思ってしまう。

「玲王に相手にされないで俺の相手させられるなんて可哀想だね」

 私が予想していたようなことはなく、凪は私の腰を抱き寄せた。力はあまり強くないが、有無を言わせない動きだった。

「玲王が望むなら言う通りにしたい」

 私が言うと、凪は可哀想なものを見る目で私を見る。玲王に憐れまれている凪に憐れまれる私は間接的に玲王に憐れまれているのだろうか。玲王は私にこんな顔をしないからわからない。

「あんたって本当に可哀想だね。好きでもない俺に抱かれたいんだ。ねえ、言っておくけど俺は誰でも抱かないからね? 俺報われない話が好きなんだ」

 凪は優しい人などではなく、玲王の言いなりにしかなれない私に興奮しているようだった。私は凪に身を任せた。考えているのは玲王のことばかりだった。