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「真一郎のお店に通いたいんだけど、バイクがないと変だと思う?」
「どう考えても変」

 私とワカは、作戦会議もとい立ち話をしていた。私が真一郎を好きなのは界隈で周知の事実だ。肝心の真一郎は鈍いままだが、ワカなどは真っ先に私の気持ちに気付いて背中を押してくれた。私は黒龍時代できるだけ真一郎とつるむようにしていたのだけど、今やそれも難しい。真一郎はバイク屋になり、私はバイクを持っていないからだ。考え込む私に、ワカが助け舟を出した。

「オレの使い古しやろうか?」
「いいの? やったー!」

 バイク屋に通うのならば、むしろ古い方がいい。私は簡単な動かし方を教わると、ご機嫌で真一郎の店へと向かった。これでまた真一郎と話す口実ができた。

「修理お願いします!」

 堂々と店に踏み入る私に、真一郎が戸惑ったような様子で近付いてくる。

「オマエこのバイクどうした?」
「ワカ君から貰ったの! いいでしょ」

 私は胸を張る。今度一緒にドライブしよう、なんて言われたらどうしよう。

 真一郎の方に目をやると、真一郎は意外にも怪訝そうな顔をしていた。

「オマエワカとそういう関係?」

 それは私達の仲を怪しんでいるというより、私達が仲良いことによって少なからず不快な感情を抱いているというようだった。真一郎は嫉妬しているのだ。思わぬところでロマンスをゲットしてしまった。

「真一郎って私のこと好きだったんだね……」
「それは言ってねーワ」

 真一郎はバイクの修理にとりかかる。真一郎のことに夢中で、何を話すかまで考えていなかった。すぐに告白してしまったりして。いやまだ、駆け引きを楽しんでいたい。私はバイクの脇に屈み込む真一郎を見た。相変わらず、純粋なんだかわからないような顔をしている。