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 名前と誕生日プレゼントの交換をするのは俺の人生のお決まりになっていた。元々が幼馴染で、高校の何年間かは付き合っていた。義理で、あるいは愛情表現であげていたプレゼントが習慣になり、別れて何年も経った今でも続いている。大抵は連休の近い五月、俺と名前は会う。二人の誕生日の中間であり、連休で実家に戻るからだ。

「おい、何で俺にビーチ用品なんだ。俺が海に行くと思ってるのか」

 名前が俺に寄越したものは浮き輪やらシュノーケルやらのセットだった。これならまだネイル用品を貰った方がよかったかもしれない。バレーボールにおいて、爪を整えるのは大事だ。

「アウトドアな彼女ができるかもしれない」
「嫌がらせか?」

 俺は名前がこのプレゼント交換を嫌がっているのかと思った。そろそろ終わりにしようと。別に俺はそれでも構わないが、二十年近い歳月の責任はとってほしい。

「お前があげたなら、責任持って海行けよ」

 俺が言うと、名前は意外そうな顔をした。海に行く同伴者に自分は含まれていないのが当たり前だと言うかのように。

「二人共海嫌いなのに?」

 わかっているなら何故ビーチ用品なんだ、と俺は心の中で悪態をつく。

「別れ話するにはぴったりだろ」
「そもそも付き合ってないんだけど」
「うるせぇ。いつも俺のこと振りやがって」

 海と言えば別れ話だ。俺はいつも名前に振られている。俺の下心が見えすぎるだけなのか、俺の誘いはいつも名前に断られる。

「聖臣に告白されたことは一度しかない」
「そういうことじゃねぇ」

 この幼馴染をもう一度彼女にするには骨が折れそうだと思った。どうしてか幼馴染に惚れてしまった、俺の負けだ。