▼ ▲ ▼

「……これ、どういう状況?」
「そのままだけど」

 自室にて、凛は窓の外を見た。ことの発端は昨晩だ。なんとか名前を自室に連れ込むことに成功したが、凛は名前に手を出す勇気が出なかった。そうこうしている間に酔った名前が眠ってしまい、もういいやと凛も隣で眠った結果、事後の朝のような雰囲気が出ているのである。言うまでもないが、凛は名前が好きだ。名前の前で余裕ぶりたいと思った結果、あたかもセックスをしたかのように振る舞っている。幸いと言うべきか、名前は記憶がないようだった。これで少しは凛のことを意識してくれるだろうか。

 凛は横目で名前を見る。名前は難解そうな表情を見せず、普段通りの声色で言った。

「それならいいや。付き合おっか」
「は?」

 まさか、こうなるとは思わなかった。そもそも、名前とはこれほど簡単に付き合ってしまう女なのか。ふざけんなビッチ、と言おうとして遮られる。

「私凛のこと結構好きだし」

 凛は開いた口をパクパクさせる。これは告白だ。でも今聞きたくはなかった。できれば凛が告白した後聞きたかった。告白する前にワンナイトを演出したのは凛なのだけど。

 嬉しい。でも、ここで付き合ってしまったら何かが違う気がする。凛は葛藤する。そもそも、名前のペースに乗せられている時点で想定とは違うのだ。実は昨日していない、と言ったら名前は意見を変えるだろうか。なら今、付き合ってしまった方がいい。

「少しだけだからな」

 凛の心臓は、はちきれんばかりに音を立てている。