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 白宝高校の屋上には穏やかな風が吹いている。頬に生ぬるい空気を感じながら、私と凪くんが立っていた。私が決闘でも申し込むような雰囲気なら、凪くんは校長の話を聞いているかのような怠そうな態度だ。しかし、実際に話はしていないのだった。用があるからと呼び出して、私はもう五分程度沈黙している。

「ねえ、早くしてくれない? もうイベント始まっちゃうんだけど」

 どちらにしろあと十分で授業が始まるのだけど、凪くんは授業中にゲームをする気なのだろうか。それで白宝に入れるほど頭の出来がいいのだから大したものだ。などと、私の頭は関係ないことを考えている。

「面倒臭いからオーケーでいいよ。どうせ告白でしょ?」

 その言葉に、私は一気に現実に引き戻された。その通りだ。だからこんなにも緊張している。だけど、凪くんを好きでいる気配は見せなかったはずだ。顔を上げると、凪くんの怠そうな視線が私と交わった。

「見てたらわかるよ。ていうか、俺のこと気にかけてくるの苗字さんくらいだし」

 それほど私がわかりやすく、凪くんが聡いということは想定外だった。それよりも凪くんが告白を了承した方が問題だ。確かに付き合いたいと思っているけれど、ゲームをやりたいから付き合われたのでは私の面目も丸潰れだ。

「付き合うって、そっちの方が面倒臭いんじゃ……」
「だって苗字さんって俺が嫌って言ったら全然デート行かないかお家デートでも我慢してくれそうじゃん。俺そういう人が好きなの」

 気付けば凪くんの好きなタイプを聞けていた。告白などしなくても、私は結構凪くんのタイプにあてはまっていたのだろうか? 私から呼び出したのだけど、「好き」だと言ったのは凪くんの方だ。

「じゃ、そういうことで」

 凪くんは屋上を去ってしまった。ゲーム以下だと言われているようなのに、私の心は満たされている。そういうところがやはり、凪くんに好きだと言われるゆえんなのかもしれない。