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「洗濯場に落ちてました」

 と差し出されたのは私の下着だった。タオルで包むことも、紙袋に入れることもされていない。それでも人のいない場所を選んだのは、影山君なりの配慮なのだろう。

「気を付けてください」
「ご、ごめんね……」

 どちらが先輩なのかわからない。私は彼から下着を受け取りながらそう思った。部員に下着を見られてしまうという意味では、影山君でよかったのかもしれない。田中や西谷では余計な想像をされそうだし、他の部員でも気まずくなりそうだ。影山君が機械的に渡してくれることが、一番だったのだろう。

 私は下着をポケットに入れて体育館に戻った。まだ自主練は続いている。スパイカー組の成功率をつけていると、後ろから声がした。

「マネージャーの下着が見えそうなんだよな……白か? ピンクか?」

 他校にも田中のような奴がいるのだ。生憎今日の私は白いTシャツを着ていた。ここで振り返ってやめてください、など言おうものなら自意識過剰とも捉えられかねない。私がぐっと聞こえないふりをしていた時、空間を割くように澄んだ声が響いた。

「薄い青ですけど」

 妄想を含んだ猥談に相応しくない、現実を伝える声。すぐに影山君だとわかった。影山君は洗濯場に落ちていた下着のことを言っているのだ。

「そういうこと言わないでよ!」

 私が文句を言うと、影山君は少し体を後ろへ引いた。

「すみません、マウント? とりたくなりました」

 影山君はマウントの意味をわかっているのだろうか。下着を渡した時はあれほど私に興味のなさそうな顔をしていたのに、これでは私を好きみたいだ。

 何と言うべきか迷っていると、他校の田中が「アオハルじゃね?」と騒いでいた。本当にうるさい。