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 玲王と私のスキャンダルが週刊誌に報じられた。正確には顔が載っているのは玲王だけなのだが、写真を撮った記者には私の顔もしっかり覚えられているだろう。今だって見られているかもしれない。私は震える手で玲王に電話した。玲王が撮られるなど、ありえなかった。撮られても玲王ならなかったことにできるはずだ。つまり、これはわざと撮られたのだ。

 玲王は数コールで出た。そして甘い声で「どうした?」と言った。順風満帆の付き合いをしている恋人同士のようだった。

「週刊誌の記事……どうして」

 わざと撮らせたの? とは告げられなかった。しかし玲王はその先を見越したように、明るい声で告げる。

「そうしたらお前の浮気を記者が見張ってくれるだろ?」

 玲王はそれがいいことのように言った。私が信用されていないというわけではないのだろう。ただ、玲王は人一倍執着心が強かった。記者は玲王にとって駒にすぎないのだ。

「大丈夫だって! 記事になる前に俺に報告させるから、何かあったら俺が飛んでくる」

 その「何か」を想像して背筋が凍る思いがした。私が玲王と誰かの二股をかける疑惑など出ようものなら、記事が出る前に私は玲王に取り調べを受けるのだろう。まだ記事で公表されるだけの方がいいかもしれない。

「記事が出たら世間から二股女だって叩かれるかもな。でもまぁいいだろ。そうしたら俺が死ぬまで守るだけだし」

 玲王はまるで、それを望んでいるような口ぶりだった。私が何もかもに怯え、力なく玲王に縋るのを恍惚とした瞳で見下ろす玲王が想像できる。私が追い詰められればいいと思っているのだ。そして、玲王しかなくなってしまえばいいと思っているのだ。私は今更になって彼氏の執念深さを知った。もう離れることすらできないのだろう。電話の向こうで玲王が愛を説いているのを、私は無心で聞いていた。