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苗字が期末テストで学年三位だと聞いた時、少なくとも俺は驚いた。苗字は毎日のように俺に「課題見せて」と言ってくるのだ。席が近いからというのもあるだろうが、部活で忙しい俺よりもやらないなんてなんと怠けた奴だろうと思っていた。何故俺に頼むのだろう。俺と関わりたいだけか。苗字はそういう奴ではないと思っていたが、まあよくあることだ。翌日、苗字が普段のように「課題見せて」と言ってきた時、俺は訝しむような目を向けた。
「答え見なくても苗字ならわかってるんだろ」
その反応で、苗字が学年三位だというのはただの噂ではないのだと思った。学年三位に好かれる俺、と考えればまあ悪い気はしない。なんだかんだ顔も可愛い方である。苗字は諦めたような笑みを浮かべた。
「テストは真面目に解くよ。でも、課題でまで脳みそ使いたくないから」
つまり、俺は利用されていただけである。別に減るものではないからいいけど、テストでいい結果を出す奴が普段から真面目に勉強していないのは気に食わない。
「俺の嫌いな天才ってやつだ」
俺が言うと、苗字は怯んだようにこちらを見上げた。
「もう見せてくれない?」
そんな縋るような目で俺を見るな。これはバレーではなく勉強なのだ、と言い聞かせて苗字を見下ろす。天才に縋られる俺、と考えれば気持ちいいことだ。
「別にいいよ。見せてやる」
「やったー」
苗字の呑気な声が上がる。天才にもこういう間延びした奴がいるなら、俺も少しは気が楽だ。
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