▼ ▲ ▼


「誕生日プレゼントを買いに行くんだけど、付き合ってくれない?」

 クラスメイトの赤葦にそう言われた時、私を二つの感情が襲った。一つは、赤葦にはプレゼントをあげたいような意中の女子がいるのだという衝撃。それから、プレゼント選びに私を頼るほど私達は仲が良かったのだという喜び。最近薄々と実感していることであるが、私は赤葦を好きなのだろう。赤葦が他の女子へプレゼントを贈る場面で気付きたくはなかったが。

「その人はどんな感じの人なの? 可愛い系? それともクールビューティーとか?」

 駅前のデパートに着き、フロアを適当に歩く。確か、このデパートには雑貨店も入っていたはずだ。普段使いできるようなタオルや水筒をあげれば間違いはないだろう。

「食べることと筋肉に支配されてるような人」
「ワイルドな人だね……」

 私はしみじみと呟いた。赤葦のタイプがそういう人だったとは思わなかった。確かに私は敵わないかもしれない。

 すると赤葦は小さく笑って私の方を向いた。

「男の人だよ。部活の先輩」

 え、と小さく声が出る。女子のプレゼント選びに迷うからついてきてほしいのだと思っていた。男子相手なら、赤葦一人でもなんとかなるだろう。

「苗字にプレゼント選ぶのを助けてほしいと思ったわけじゃなくて、ただ一緒に買い物に行きたかっただけ」

 そういえば選ぶのを手伝ってほしいとは言われなかった。ただ買い物に付き合ってほしいと言われただけだ。

「結果ついてきてくれたし、木兎さんもいいことするよね」

 これはデートなのだと、今更ながらに実感した。赤葦はこういう駆け引きをする人だったのだ。私は心の中で「木兎さん」に感謝した。