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 凛に話しかけようとした時、偶然凛のスマートフォンの中身を見てしまった。凛が開いていたのはインターネットショッピングサイトで、表示されているのは可愛らしいストラップなどだ。到底男が、それも凛が選ぶようなものには見えない。

 私が驚いていることを感じ取ったのだろう、凛は面倒そうに説明した。

「何もしてねぇと女が寄ってきてウザすぎる。彼女持ちに見せるためにペアストラップつければいいだろ」

 そこで「彼女を作る」という選択肢がないのが凛らしい。確かに、明らかに女の子が選んだとわかるストラップの一つでもつけていればある程度寄ってくる女の子の数は減らせるだろう。

「名前が選べ」
「え? 何で?」

 凛のスマートフォンをずいと押し付けられ、私は両手を挙げる。彼女に選んでもらった設定のペアストラップを私が選んでしまっては、問題があるのではないだろうか。色々と。

「俺は女の好きそうなやつがわかんねぇ」

 凛に任せていては男も使える無難なデザインのものになりそうだ。そこには同意する。私は何故だか緊張しながら凛のスマートフォンを握りしめた。見ようと思えば、凛のメッセージアプリの中身すら見られてしまう。誘惑と戦って真面目に選ぶも、なかなか決められない。凛がつけるのだと思ったら。

「フェイクだから何でもいいんだよ」

 凛は言うが、フェイクだとしても私が選んだものを凛がつけるのなら重大だ。私は散々迷った挙句、女の子が選びそうなものをカートに入れて凛にスマートフォンを返した。一仕事終えたようなつもりでいたのだが、後日届いたストラップの片方を持って凛が私の家を訪れたのはまた別の話だ。