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 中間テストが近付いてきた。私は推薦を狙っているわけでもないので呑気なものである。先日の小テストの結果を受け取り、机に戻る。するとその高い背のせいか、私の点数を見たらしい佐久早が苦言を呈した。

「死ぬ気で勉強しろ」

 佐久早とは、そこまで勉強熱心だっただろうか。佐久早自身、成績は良いが決して積極的に順位争いに励むタイプではないようだ。ヒントを与えるように、佐久早が「月末の日曜日」と言った。その日は中間テストで赤点をとった者の補習の日だ。あと、佐久早の試合がある。

「そんなに私に来てほしかった?」

 私は自分の点数を棚に上げ、佐久早をおちょくるように笑った。いつも私が勝手に観戦しているだけで、佐久早から要求されるとは思わなかった。佐久早は顰めっ面をし、テスト用紙から私に視線を移した。

「有言不実行を責めてるだけだ」

 はたと思い出す。そういえば、私が佐久早を追いかけまわすようになった頃佐久早の試合は全部行くと言った。佐久早はそのことを指しているのだろう。私の矛盾を正攻法で責めるとは、なんとも佐久早らしい。私に来てほしいという気持ちがないわけでもないのかもしれないが。

「じゃあ私が来たら頑張れるとかじゃないのか」

 わざとらしく私が呟くと、佐久早は自身のテスト用紙をまとめながら言った。

「どの試合でも全力でやる。終わった後間抜けヅラがあるかどうかの違いだ」

 ちらりと見えた点数は満点に近いもので、佐久早が努力家であることを感じる。そんな努力家を追いかけるなら、私も少しは努力しなくてはいけないのかもしれない。佐久早のためなら頑張れるか。勉強を教えてもらうという甘いイベントは起こりそうにないが、私は努力することを決めた。