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 多分、ちょろい奴だろうとは思っていた。酒を飲む年齢になり、酒に飲まれる奴――特に女において、酒のせいで一夜の過ちを犯してしまう奴がどういった奴であったかはわかっていた。名前はそれにぴたりとあてはまっていた。名前をこのまま世に放ったら、必ずどこぞの男と寝て帰ってくる。幼馴染として、名前が体を利用されて悲しむ姿は見たくなかった。そのためには、一度失敗でもしないと理解しないだろう。幸い、名前が一晩寝たら痛烈に後悔するであろう相手は用意できた。冴だ。冴自身ならば、名前と寝たとしても許すことができた。冴だって、可愛い幼馴染のためなら一夜を共にするくらい嫌ではない。セックスをしたからと言って、今までの関係性が全てなくなるほどやわな仲ではなかった。早速冴は二十歳の誕生日に名前を呼び、酒を飲ませる。名前は驚くほど簡単に酒に潰れた。冴は名前の体を運び、自室に移動する。週刊誌に撮られたら撮られただ。名前とのセックスは、他の女とするセックスと大差なかった。ただ、幼馴染を犯しているのだと思うと背徳感がした。

 翌朝、名前は起きるなり顔を覆った。記憶はあるのだろう。冴は水の入ったペットボトルを差し出す。

「これでもう酒飲むなよ」

 名前は耐え難い羞恥に襲われているようで、しばらく手を震わせていた。

「……うん」

 冴が服を着、朝支度をする。名前ものろのろと起き上がり、体を隠しながら服を身につけた。

 名前が逃げるように冴の部屋を去ってから、ふうとため息をつく。任務完了だ。これで名前が教訓を胸に刻めばいいのだけど。

「もうお酒はやめたから」

 数ヶ月後、一緒になった飲みの場で名前がそう言ったのを聞いて、冴は口角を上げることになる。