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「ポッキーゲームしようよ」

 などと甘い言葉を自分が吐くと思わなかった。少し間違えればバカップルのような言動ができているのは、凪くんが甘えん坊な性格であるせいだろう。彼を甘やかす内に、私ももう少し甘えてもいいのではないか、と思うようになってきた。普段玲王くんに甘やかされてばかりの凪くんだが、私には時折甘やかすような仕草を見せた。今日も、私に付き合ってくれるだろう。

 私は期待した目を向ける。面倒くさいが口癖で、一人で過ごすことの方が多い凪くんに最初不満を感じることもあった。でも、凪くんは凪くんで努力してくれていると感じる。今だって、ゲームもせずに私と二人きりの時間を過ごしてくれている。

 凪くんは、真顔で私の前に立ちはだかった。

「ダメ。俺はもうゲームより名前を優先するって決めたから」

 凪くんはいい彼氏であろうと歩み寄ってくれている。その努力が、今日は裏目に出てしまった。

 恋愛に興味のなさそうな凪くんのことだ。ポッキーゲームが何なのか知らないのだろう。「ゲーム」と名がつくからには、私を放置してしまう何かだと思っているに違いない(前に二人でゲームをした時には、私が一方的にボコボコにされた)。

「ゲームじゃなくて、二人で過ごすためにだよ」

 ポッキーゲームは恋人のための甘い遊びなのだ。伝えたいが、その全容を話してしまうことはナンセンスなのではないかと思ってしまう。結果、凪くんを説得できるような言葉が生まれない。

「二人でゲームするよりもえっちした方がいいでしょ?」

 私の肩に手をかけて首を傾げられたら、私は頷くほかなかった。後でネタばらしをしたら、凪くんはしておけばよかったと言うだろうか。それはまた、事を済ませた後に考えればいい。